里親委託の終了・解除を知る:理由、手続き、その後の支援と備え
はじめに
里親として子どもを家庭に迎え入れることは、尊い経験であると同時に、養育期間やその後のことについて様々な疑問や不安を抱く方もいらっしゃるかもしれません。里親養育は、子どもの成長や状況の変化、あるいは里親家庭の状況など、いくつかの理由によって終了または解除されることがあります。これは、里親に委託された子どもたちが、最終的には家庭や地域社会の中で自立していくためのプロセスの一部でもあります。
この記事では、里親委託が終了・解除される主な理由、その手続きの流れ、そして終了後の子どもと里親への支援について、具体的な情報を提供します。これらの情報を事前に理解しておくことは、里親として子どもを迎える上での心構えを整え、より安心して養育に取り組むために役立つでしょう。
里親委託が終了・解除される主な理由
里親委託は、多くの場合、子どもの最善の利益を考慮して終了または解除されます。主な理由としては、以下のようなケースが考えられます。
- 委託期間の満了
- 養育里親や専門里親には、それぞれ委託できる期間に目安があります。例えば、養育里親は原則として子どもが18歳になるまでですが、場合によっては措置延長や措置変更が行われます。期間満了による終了は、事前に見通しが立てやすいケースと言えます。
- 実親等への引き渡し
- 一時保護を経て里親に委託された子どもが、実親の養育環境が改善されたり、親族による養育が可能になったりした場合に、実親等の元に戻る(家庭復帰する)ことがあります。これは里親養育の目的の一つでもあります。
- 措置の変更
- 子どもの成長や状況の変化により、里親委託よりも施設での養育がより適切と判断される場合や、特別養子縁組へと移行する場合など、児童福祉法に基づく措置が変更されることがあります。
- 子どもの自立
- 高校卒業後や18歳以降に、進学や就職などを機に子どもが自立して生活を始める場合です。
- 里親の事情によるもの
- 里親の病気や高齢化、家庭の事情などにより、養育の継続が困難になった場合です。里親はいつでも委託解除の申し出をすることができます。
- 子どもの事情によるもの
- 子どもの問題行動が著しい、里親家庭との関係が著しく悪化するなど、里親家庭での養育が困難になった場合です。この場合、児童相談所が状況を判断し、措置変更などを検討します。
これらの理由のいずれにおいても、委託の終了・解除は児童相談所が中心となり、関係者間で慎重に検討され決定されます。
里親委託終了・解除の手続きの流れ
里親委託の終了または解除は、事前の見通しがある場合も、そうでない場合も、児童相談所との連携のもとで進められます。一般的な手続きの流れは以下のようになります。
- 終了・解除の検討開始
- 委託期間の満了が近づいている、実親の環境が整った、里親または子どもから養育継続が困難との相談があったなど、様々なきっかけで児童相談所が終了・解除の可能性について検討を開始します。
- 関係者間での話し合い
- 児童相談所、里親、子ども(年齢に応じ)、実親(可能な場合)、必要に応じて学校や医療機関など、関係者が集まり、子どもの状況や今後の方向性について話し合います。子どもの意向も十分に尊重されます。
- 児童相談所による判断
- 話し合いの結果や子どもの状況、児童福祉の専門的な見地から、児童相談所長が委託の終了または解除、あるいは措置変更の判断を行います。
- 新たな環境への準備
- 家庭復帰、施設入所、新たな里親委託、自立支援など、決定した措置に基づいて、子どもが次の生活環境へ円滑に移行できるよう準備が進められます。里親も、子どもが新しい環境に馴染めるよう協力します。
- 委託の終了・解除
- 決定した期日をもって、正式に里親委託が終了または解除されます。
- 措置変更後のフォローアップ
- 終了・解除後も、児童相談所は子どもの状況を継続的に見守り、必要に応じて支援を行います。里親も、養育終了後の子どもとの関係について児童相談所と相談することができます。
手続きの具体的な進め方や期間は、ケースによって異なります。重要なのは、常に児童相談所と密に連携を取り、情報を共有しながら進めることです。
委託終了・解除後の子どもと里親への支援
里親委託の終了・解除は、子どもにとっても里親にとっても大きな転換期となります。この時期を乗り越え、次へのステップへ進むために、様々な支援が用意されています。
子どもへの支援
- 進路に応じた支援
- 実親家庭、新たな里親家庭、施設など、次の環境での生活や学習への適応をサポートします。転校が必要な場合の手続き支援なども含まれます。
- 高校卒業後の進学や就職に向けた相談、奨学金や各種助成制度に関する情報提供、手続き支援など、自立に向けた具体的な支援が行われます。
- 居住に関する支援
- 大学等への進学や就職のために、実家や新しい里親家庭から離れて暮らす場合、自立援助ホームやグループホームなどの紹介、家賃補助などの支援があります(児童福祉法に基づく「自立支援資金」など)。
- 経済的支援
- 児童養護施設等に入所中の子どもや、里親委託が解除されて措置が終了した子どもに対し、高等学校等への就学等の支援、大学等への修学等の支援、就職支度費の支給など、自立のための経済的支援制度が複数あります。これらは主に措置解除児童等自立支援事業やそれに類する自治体独自の事業として実施されています。
- 心理的ケア
- 環境の変化に伴う不安や葛藤に対し、心理士によるカウンセリングや相談支援が行われることがあります。
- アフターケア
- 児童養護施設等を退所した子どもと同様に、里親委託が終了した子どもに対しても、相談支援員による継続的な相談支援(アウトリーチを含む)や、一時的な宿泊場所の提供、就労支援など、地域や自治体によるアフターケア事業が提供されています。
里親への支援
- 相談支援
- 委託終了・解除に関する手続きや、子どもとの今後の関わり方について、児童相談所や里親支援機関に相談することができます。
- レスパイトケア
- 長期にわたる養育を終えた里親に対し、休息やリフレッシュのための支援が提供されることがあります。
- 里親会等での交流
- 養育を終えた里親同士が集まり、経験や気持ちを共有する場に参加することで、心の整理や支え合いができます。
- 次の委託への準備
- 養育里親の場合、次の子どもの受け入れについて、児童相談所と相談し、準備を進めることができます。
これらの支援は、自治体や里親支援機関によって内容や提供方法が異なる場合があります。具体的な支援内容については、担当の児童相談所や里親支援機関にご確認ください。
委託終了・解除に備える心構えと準備
里親委託の終了は、子どもとの別れを意味するため、里親にとって辛い経験となることもあります。しかし、これは養育の失敗ではなく、子どもが次のステップに進むための必要なプロセスとして捉えることが大切です。
- 早期からの見通しと共有
- 可能な限り早期から、委託期間や終了の可能性について児童相談所と情報共有し、子どもとも年齢に応じて分かりやすく話し合う機会を持つことが望ましいです。
- 子どもの気持ちに寄り添う
- 子どもも環境の変化に対して不安や抵抗を感じることがあります。子どもの気持ちに寄り添い、安心して新しい環境へ移行できるようサポートすることが重要です。
- 里親自身の心の準備
- 養育を終えることによる喪失感や寂しさは自然な感情です。里親支援機関や他の里親と話し合うなど、ご自身の感情をケアすることも忘れないでください。
- 関係機関との連携
- 児童相談所や必要に応じて実親など、関係機関と密に連携を取り、子どもの移行がスムーズに進むよう協力体制を築くことが重要です。
まとめ
里親委託の終了・解除は、様々な理由によって起こり得ます。これは里親養育の終わりではなく、子どもの成長に伴う次のステップへの移行です。委託が終了・解除される主な理由、その手続きの流れ、そして終了後の子どもと里親への支援について理解しておくことは、里親として安心して養育に取り組む上で非常に重要です。
予期せぬ終了や解除のケースもあり得ますが、どのような場合でも、児童相談所を中心とした関係機関が連携し、子どもの最善の利益を考慮しながら手続きを進めます。里親自身も、これらのプロセスを理解し、関係機関と積極的にコミュニケーションを取りながら、子どもが新しい環境で健やかに育っていけるよう、最後までサポートしていくことが求められます。そして、養育を終えた里親自身も、利用できる支援や相談先を活用しながら、次の歩みを進めていくことが大切です。