里親と養子縁組、どちらを選ぶ?制度の違いと検討すべきポイント
はじめに:里親制度と養子縁組制度を知る
子どもを迎えることを検討されている方が、情報収集を進める中で、「里親制度」と「養子縁組制度」という二つの制度の存在を知り、その違いや、どちらを選ぶべきかで悩まれることがあるかもしれません。
どちらの制度も、様々な事情により家庭での養育が難しくなった子どもたちに、新たな家庭を提供するという共通の目的を持っています。しかし、制度の目的、子どもとの法的な関係性、養育期間など、いくつかの重要な違いがあります。
この記事では、里親制度と養子縁組制度、それぞれの概要とその違いを解説し、ご自身の状況や希望に照らして、どちらの制度がより合っているかを検討するためのポイントをご紹介します。
里親制度の概要
里親制度は、保護者による養育が困難または適当でない子どもを、一定期間、自分たちの家庭に迎え入れ、養育する制度です。子どもが家庭的な環境で安心して成長できるよう支援することを目的としています。
里親の種類
里親制度にはいくつかの種類があります。
- 養育里親: 養護を必要とする子どもを、期間を定めて養育する里親です。最も一般的な里親です。
- 専門里親: 虐待などで心身に傷を負った子どもや、非行傾向のある子どもなど、専門的なケアを必要とする子どもを養育する里親です。
- 親族里親: 両親が死亡、行方不明、拘禁などの状況にある場合に、祖父母などの親族が里親となって養育するものです。
- 週末里親・季節里親(登録里親): 夏休みや冬休みなどの長期休暇や週末だけ子どもを預かり、一時的な家庭体験を提供する里親です。
里親と子どもとの関係性
里親は子どもの「養育者」という位置づけであり、子どもとの法的な親子関係は生じません。親権は実親または児童相談所長にあります。監護権は里親に委託されます。子どもは原則として、元の戸籍から移動せず、名字も変わりません。
養育期間
子どもの状況や実親の状況にもよりますが、一定期間(多くは数ヶ月から数年)の養育が想定されます。状況が改善すれば実親のもとに戻ることもあれば、自立支援施設に移るなど、永続的な家庭を提供するものではありません。ただし、長期にわたる養育が必要となる場合もあります。
経済的支援
里親には、子どもの養育に必要な費用の一部として、養育費などが公費から支給されます。詳細は「里親・養子縁組で受けられる経済的支援の種類と内容」の記事もご参照ください。
養子縁組制度の概要
養子縁組制度は、実の親子と同様の法的な親子関係を結ぶ制度です。これにより、子どもは法的に安定した家庭環境を得て、健やかに成長することが期待されます。
養子縁組の種類
主に二つの種類があります。
- 特別養子縁組: 原則として6歳未満(特別な場合は8歳未満)の子どもと養親との間で、実の親子関係を終了させ、新たに法的な親子関係を築く制度です。家庭裁判所の決定により成立し、実親との関係は法的に完全に切断されます。
- 普通養子縁組: 年齢制限はなく、親子関係を築きますが、実親との親子関係も継続します。戸籍上は「養子」と記載されます。多くの場合、親族間で行われることが多いですが、第三者との間でも可能です。
養子縁組と子どもとの関係性
養子縁組が成立すると、養親と子どもの間に法的な親子関係が確立します。特別養子縁組の場合、実親との法的な関係は解消されます。普通養子縁組の場合は、実親との関係も存続します。子どもは養親の戸籍に入り、原則として養親の名字を名乗ります。親権・監護権は養親に移ります。
養育期間
特別養子縁組は、原則として子どもが成人するまで(あるいはそれ以降も)、永続的な親子関係を築くことを前提としています。普通養子縁組も同様です。
経済的支援
養子縁組成立後、里親制度のような継続的な養育費の公費支給はありません。ただし、特定の条件(障害など)に当てはまる子どもを引き取った場合や、自治体によっては独自の支援制度を設けている場合があります。
里親制度と養子縁組制度の比較
両制度の主な違いをまとめます。
| 項目 | 里親制度 | 養子縁組制度(特別養子縁組を主とする) | | :------------------- | :------------------------------------------- | :----------------------------------------------- | | 目的 | 一定期間、家庭での養育を提供する | 永続的な法的な親子関係を築く | | 期間 | 原則として一定期間(数ヶ月~数年)、状況による | 原則として永続的 | | 子どもとの法的な関係 | 養育者。法的な親子関係は生じない | 法的な親子関係が成立 | | 親権・監護権 | 親権は実親または児童相談所長。監護権は里親 | 親権・監護権は養親に移る(特別養子縁組では実親の親権は消滅) | | 戸籍・名字 | 原則として実親の戸籍・名字 | 養親の戸籍に入り、養親の名字を名乗る(特別養子縁組の場合) | | 実親との関係 | 原則として関係は継続 | 法的に解消される(特別養子縁組の場合) | | 経済的支援 | 養育費などが公費から支給される | 原則としてない(一部例外・自治体支援あり) | | 対象年齢(特別養子) | 年齢制限なし(ただし子どもの状況による) | 原則6歳未満(例外あり) |
どちらの制度が合うか?検討すべきポイント
里親制度と養子縁組制度のどちらを選ぶかは、ご自身の家族構成、ライフスタイル、子どもに対する考え方、そして何よりも子どもにとって何が最善かという視点から慎重に検討する必要があります。以下のポイントを参考にしてみてください。
- 子どもとの関係性の希望: 法的な親子関係を築き、永続的に家族として生きていきたいのか、それとも期間限定であっても、家庭での養育を必要とする子どもを支えたいのか。
- 養育期間への考え方: 長期にわたる養育を前提とするのか、それとも、子どもの状況に応じて期間が変わる可能性を受け入れられるのか。
- 実親やルーツへの関わり: 子どもの実親やルーツとの関わりがある(あるいは将来的に発生する可能性がある)ことについて、どのように考えられるか。特別養子縁組では法的な関係は断たれますが、子どもがルーツを知る権利について考える必要もあります。
- 求められる養育: どのような状況の子どもを迎え入れたいか、あるいは迎え入れることができるか。特別な支援やケアが必要な子どもを養育する覚悟があるか。
- 経済的な側面: 継続的な経済的支援が必要か、あるいは公的な支援がない状況でも養育できる経済的な基盤があるか。
- 家族の同意と理解: 夫婦間や既にいる子どもを含めた家族全員が、どちらの制度を選択することについても十分に理解し、同意しているか。
相談機関を活用する
これらの違いや検討ポイントを踏まえても、どちらの制度が自分たちに合っているかを判断することは容易ではないかもしれません。また、制度の具体的な内容や手続きは、個別のケースや地域によって異なる場合があります。
そのような時には、一人で悩まず、児童相談所や民間のあっせん団体、里親支援機関などの専門機関に相談することが非常に重要です。これらの機関では、制度について詳しく説明を受けることができるだけでなく、ご自身の状況や疑問、不安を相談し、適切なアドバイスや情報提供を受けることができます。
まとめ
里親制度と養子縁組制度は、どちらも子どもたちの健やかな成長を支える素晴らしい制度ですが、その目的や子どもとの関係性において大きな違いがあります。
これらの違いを理解し、ご自身の家族の状況、願い、そして子どもにとっての最善を真摯に考えることが、適切な選択への第一歩となります。疑問点や不安があれば、ためらわずに専門機関に相談し、必要な支援を受けながら検討を進めていくことをお勧めします。
【注記】 制度に関する情報は変更される場合があります。最新の情報や詳細については、必ずお住まいの地域の児童相談所や都道府県等の担当窓口にご確認ください。