里親・養子縁組:公的機関と民間あっせん団体の特徴と選び方
はじめに:里親・養子縁組、公的と民間の違いという疑問
里親制度や特別養子縁組について情報収集を進めると、子どもとの縁組や委託のあっせんを行う主体として、「公的機関」と「民間あっせん団体」があることに気づかれるかと思います。しかし、これらの違いや、ご自身の希望や状況に合った選択肢がどちらなのかについて、どのように整理し、検討を進めれば良いのか迷われる方も少なくないでしょう。
この記事では、里親・養子縁組における公的機関(主に児童相談所)と民間あっせん団体それぞれの特徴、具体的な違い、そしてご自身に合った選択肢を見つけるための比較検討のポイントについて解説します。これらの情報を基に、一歩踏み出すための参考にしていただければ幸いです。
公的機関(児童相談所)によるあっせんの特徴
公的機関による里親委託や養子縁組あっせんの中心となるのは、各都道府県・政令指定都市等に設置されている児童相談所です。児童相談所は、子どもたちの福祉を守るための総合的な機関であり、様々な事情で家庭での養育が困難になった子どもたちの保護や支援を行っています。
対象となる子どもたち
児童相談所が関わる子どもたちは、虐待、保護者の病気や死亡、経済的困窮など、様々な理由で家庭から離れて生活せざるを得なくなった子どもたちです。年齢層は乳幼児から高校生世代までと幅広く、中には心身に特別なケアが必要な子どもや、きょうだいと共に委託・あっせんが必要なケースもあります。
手続きと期間
里親登録や養子縁組を希望する場合、まず居住地の児童相談所への相談から始まります。研修の受講、家庭訪問による調査、審査会での認定を経て、里親として登録されます。登録後、子どもの状況や希望と照らし合わせながら、マッチングが行われます。特別養子縁組の場合は、さらに家庭裁判所の審判が必要です。
手続きにかかる期間は、個別の状況や自治体によって異なりますが、里親登録までには数ヶ月から1年程度かかるのが一般的です。子どもとのマッチングや委託・あっせん、養子縁組の成立までには、さらに時間を要する場合が多く、数年以上かかることも珍しくありません。これは、子どもの権利を最優先に、慎重なマッチングや関係調整が行われるためです。
費用
公的機関を通じた里親委託や養子縁組あっせんに、あっせんのための費用はかかりません。里親として子どもを養育する際には、国や自治体から養育費や生活費、学校教育に関する費用などが支給されます。ただし、子どもの養育にかかる全ての費用が賄われるわけではなく、里親自身の負担となる部分もあります。特別養子縁組が成立した後も、養育に関する支援金等が支給される場合があります(制度は自治体により異なります)。
支援体制
児童相談所は、委託・あっせん後の里親や養親への支援も行います。担当の児童福祉司や里親支援専門相談員が、定期的な訪問や相談対応を通じて、養育に関する悩みや困難に対する助言や支援を提供します。また、同じ立場の里親同士が集まる交流会や研修なども開催されます。
民間あっせん団体によるあっせんの特徴
民間あっせん団体は、特定非営利活動法人(NPO)などに代表される、営利を目的としない民間団体です。主に特別養子縁組を前提とした乳幼児のあっせんを行っている団体が多いですが、その活動内容や方針は団体によって多様です。
対象となる子どもたち
民間あっせん団体が扱うケースは、主に生みの親が様々な事情(経済的困難、若年妊娠、予期せぬ妊娠など)により、自ら育てることが難しいと判断し、団体の支援を受けて養子縁組を前提として子どもを託すケースです。対象となるのは新生児や乳児が中心となります。
手続きと期間
民間あっせん団体を利用する場合も、まずは団体への問い合わせや説明会への参加から始まります。団体の研修プログラムを受講し、面談や家庭調査を経て、登録となります。登録後、あっせん可能な子どもが出た場合に、登録者の中から候補が選ばれ、マッチングが進められます。最終的に、家庭裁判所の審判を経て養子縁組が成立します。
手続きの期間は団体によって異なりますが、登録から子どもとの出会いまで、数ヶ月から数年かかる可能性があります。公的機関と比較して、乳幼児のあっせんが中心であるため、子どもとの出会いまでの期間が比較的短い傾向があると言われることもありますが、これは子どもの状況や団体の活動状況、登録者の状況など様々な要因に左右されます。
費用
民間あっせん団体を利用する場合、団体の運営にかかる費用やあっせんに関する費用が発生します。費用の内訳や金額は団体によって大きく異なり、数十万円から数百万円程度の費用がかかる場合があります。内訳としては、登録料、研修費、家庭調査費、あっせん手数料、弁護士費用(裁判所手続き関連)などが含まれることが一般的です。詳細な費用については、各団体の規定を確認する必要があります。
支援体制
民間あっせん団体も、養子縁組成立後の養親への支援を行っています。電話相談、面談、交流会の開催などを通じて、養育上の悩みや課題に対するサポートを提供します。支援の内容や期間は団体によって異なります。
公的機関と民間あっせん団体の比較
公的機関と民間あっせん団体の主な違いを以下の表にまとめました。ただし、これは一般的な傾向であり、個別の児童相談所や民間団体によって詳細は異なる場合があります。
| 項目 | 公的機関(児童相談所) | 民間あっせん団体 | | :--------------- | :------------------------------------------------------------------------------------- | :----------------------------------------------------------------------------------- | | あっせん対象 | 様々な事情で家庭養育が困難な子ども全般(乳幼児~高校生世代、特別なケアが必要な子、きょうだい等) | 主に養子縁組を前提として託された新生児・乳児が多い | | 目的 | 子どもの最善の利益に基づき、家庭での養育が困難な子どもに代替養育を提供する | 子どもの最善の利益に基づき、養子縁組を前提とした家庭を見つける支援を行う(多くの場合) | | 費用 | あっせん費用は原則無料。養育に関する公的支援(養育費等)あり。 | 団体所定の費用が発生(登録料、研修費、あっせん料など)。数十万~数百万円程度かかる場合あり。 | | 手続き期間 | 登録・認定まで数ヶ月~1年。子どもとの出会い・成立まで数年以上かかるケースも多い。 | 団体による。登録~出会いまで数ヶ月~数年。公的機関より比較的短い傾向があると言われることも。 | | 支援体制 | 児童福祉司等による相談・支援、研修、交流会など。継続的な関わり。 | 団体による相談・支援、研修、交流会など。支援内容・期間は団体により異なる。 | | 情報公開 | 制度全体に関する情報は自治体等が提供。個別の児童相談所の活動状況は限定的。 | 団体ごとに活動内容や費用、実績などを公開している場合が多い。 |
どちらを選ぶかの検討ポイント
公的機関と民間あっせん団体のどちらが良いかは、一概に決まるものではなく、希望される方の状況や考え方によって異なります。以下の点を参考に、ご自身の状況に照らし合わせて検討を進めてみてください。
1. どのような子どもを迎えたいか
- 新生児や乳幼児との養子縁組を強く希望する場合:民間あっせん団体が中心となる可能性があります。
- 年齢の高い子ども、特別なケアが必要な子ども、きょうだいなどを里親として迎えたい場合:公的機関(里親制度)が主な選択肢となります。
- 様々な年齢の子どもとの関わりや、多様な背景を持つ子どもに関心がある場合:公的機関の里親制度(養育里親など)も検討の価値があります。
2. 費用について
- 費用を抑えたい、公的な支援を活用したい場合:公的機関を通じたあっせんや里親制度が主な選択肢となります。
- 民間団体の理念や活動に共感し、費用負担が可能である場合:民間あっせん団体も選択肢となります。団体の費用体系や支援内容をしっかり確認することが重要です。
3. 手続き期間について
- 長期的な視点でじっくり準備を進めたい場合:公的機関、民間どちらも可能性はありますが、公的機関はマッチングに時間を要するケースが多い傾向があります。
- 比較的短い期間で子どもとの出会いを希望する場合:民間あっせん団体の方が対象となる子の年齢層から、結果的に出会いまでの期間が短くなるケースもあるようですが、確約できるものではありません。期間だけでなく、丁寧な手続きと適切なマッチングが重要です。
4. 支援体制について
- 委託・縁組後の公的な支援や専門家による継続的なサポートを重視する場合:公的機関の支援体制は確立されています。
- 特定の団体の理念や専門性に基づいた独自の支援を希望する場合:民間あっせん団体の支援内容を確認し、比較検討します。
5. 情報収集と相談
- まずは地元の児童相談所に相談し、公的な制度や現状について正確な情報を得ることが基本となります。
- 関心のある民間あっせん団体があれば、資料請求や説明会への参加を通じて、活動内容、方針、費用、手続き、支援体制などについて詳しく確認しましょう。複数の団体を比較検討することをお勧めします。
- 実際に里親や養親として子どもを迎えた方の体験談を聞くことも、検討を進める上で非常に参考になります。
まとめ:ご自身と子どもにとって最善の選択のために
里親・養子縁組は、子どもたちの健やかな成長を支えるための尊い取り組みです。公的機関と民間あっせん団体は、それぞれ異なる特徴と役割を持っています。どちらを選択するにしても、最も重要なのは、子どもにとって最善の利益が図られるかどうかという視点です。
この記事で解説した公的機関と民間あっせん団体の違いや比較ポイントを参考に、ご自身の希望、状況、そして子どもを迎え入れた後の生活について具体的にイメージしながら、情報収集と検討を進めてください。不明な点や不安な点は、迷わず各相談窓口(児童相談所や関心のある民間団体)に問い合わせて専門家のアドバイスを求めることが、納得のいく選択につながります。
この一歩が、子どもたちと希望される方々にとって、より良い未来へと繋がることを願っています。