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里親・養子縁組を迎えるための家族の準備:理解を得るステップと大切なコミュニケーション

Tags: 里親, 養子縁組, 家族, コミュニケーション, 子育て

はじめに

里親制度や養子縁組に関心を寄せ、ご自身やご夫婦で情報収集を進めている方も多いことと思います。次のステップとして、実際に里親・養子縁組の申請を検討する段階に至った際、避けて通れない重要なプロセスの一つが、ご家族、特にパートナー(配偶者)や共に暮らすお子さん(実子)、そして親族の理解と協力を得るための準備です。

里親・養子縁組は、特定の個人だけでなく、家庭全体、ひいては親族も含めた家族全体で子どもを迎える取り組みです。そのため、家族一人ひとりの気持ちに寄り添い、共通理解を築くことが、新たな家族を迎える上での土台となり、子どもの健やかな成長と家庭の安定に不可欠となります。

この記事では、里親・養子縁組に向けて家族の理解と協力を得るための具体的なステップや、それぞれの家族構成員とのコミュニケーションのポイント、そしてこの過程で起こりうる課題への向き合い方について詳しく解説します。

なぜ家族の理解と協力が必要なのか

里親や養子縁組によって子どもを迎えることは、家庭のあり方を大きく変える出来事です。子どもはそれぞれの背景を持っており、養育には特別な配慮や専門的な知識が必要となる場合もあります。このような状況で、養育者であるご夫婦やご本人の負担が過度に集中するのではなく、家族全体で子どもを支え、共に成長していくためには、以下の点で家族の理解と協力が不可欠です。

パートナー(配偶者)との話し合いを進めるステップ

里親・養子縁組を検討し始めたら、まずパートナーと率直に話し合うことが最も重要です。

  1. 検討を始めたきっかけや想いを共有する: なぜ里親・養子縁組に関心を持ったのか、どのような家庭を築きたいのか、ご自身の純粋な気持ちを正直に伝えます。
  2. 制度についての情報を共有し、共に学ぶ: ご自身で調べた情報だけでなく、児童相談所や民間あっせん団体の説明会に一緒に行く、関連書籍を共に読むなど、制度について一緒に理解を深める機会を持ちます。正確な知識を共有することで、誤解や漠然とした不安を解消しやすくなります。
  3. それぞれの懸念や不安を正直に伝え合う: 子どもを迎えることへの期待だけでなく、「経済的な負担は大丈夫か」「子育ての経験がないから不安だ」「今の生活が大きく変わることへの抵抗がある」など、お互いが抱いている正直な懸念や不安をオープンに話し合います。批判することなく、傾聴する姿勢が大切です。
  4. 課題への向き合い方を具体的に話し合う: 出てきた懸念に対して、どのように対応できるか、一緒に解決策を探る話し合いをします。例えば、経済的な支援制度について詳しく調べる、子育て経験者に話を聞く機会を持つなどです。
  5. お互いの「覚悟」を確認する: 子どもを迎えることは、喜びだけでなく、困難も伴う長期的なコミットメントです。お互いがどのような「覚悟」を持ってこの道を進もうとしているのかを確認し合い、夫婦としての意志を固めます。

この話し合いは一度で終わるものではありません。時間をかけて、何度も繰り返し、お互いの気持ちを確認しながら進めるプロセスです。

実子への伝え方と関わり方のポイント

既に家庭にお子さんがいる場合、新しい家族が増えることについて、お子さんへの伝え方と迎え入れた後の関わり方は非常に重要です。

  1. 時期と伝え方:
    • 検討段階の早い時期から、お子さんの年齢や理解度に合わせて、丁寧に話し始めることが望ましいです。ただし、制度が複雑であるため、漠然とした不安を与えないよう、具体的な話は申請の少し前など、ある程度進んでからにするなど配慮も必要です。
    • 「新しい家族ができるかもしれない」「〇〇な理由で、助けが必要な子どもたちがいるんだ」など、分かりやすい言葉で伝えます。
    • お子さんの質問には、正直に、しかし子どもが傷つかないように配慮しながら答えます。分からないことは一緒に調べる姿勢を見せることも大切です。
  2. 子どもの気持ちに寄り添う:
    • 子どもは新しい家族が増えることに対して、喜び、戸惑い、不安、嫉妬など、様々な感情を抱く可能性があります。「自分の親が取られてしまうのではないか」「自分はもう愛されないのではないか」といった不安を感じる子もいます。
    • お子さんの話を丁寧に聞き、どんな気持ちも否定せず受け止めます。お子さんの不安を和らげるために、「あなたのことが大好きであることに変わりはない」「あなたは私たちにとって大切な子どもだよ」というメッセージを繰り返し伝えます。
    • 新しい家族を迎えることによる生活の変化について、具体的に説明し、不安を軽減します。
  3. 共に学ぶ機会を作る:
    • 里親・養子縁組について子ども向けの書籍を読んだり、関連するアニメやドキュメンタリーを一緒に見るなどして、子どもが制度や子どもたちの状況について理解を深める機会を作ります。
    • 可能であれば、里親家庭や養子縁組家庭の経験談を聞く機会を設けることも有益です。
  4. 迎え入れた後の関わり:
    • 迎え入れた子どもだけでなく、実子にもこれまでと変わらない愛情と関わりを持ち続けることが非常に重要です。
    • 実子の気持ちや変化に常に気を配り、困ったことや不安なことがあればいつでも相談に乗る姿勢を見せます。
    • きょうだい間の関係構築をサポートし、それぞれの気持ちを尊重する家庭環境を作ります。

親族(祖父母など)への説明と理解

ご両親やご兄弟姉妹といった親族への説明も、家庭によっては大きなステップとなります。

  1. 丁寧な説明: 里親制度や養子縁組について、なぜこの選択肢を考えたのか、どのような制度なのかを丁寧に説明します。親族が制度について知らないことも多いため、基本的な情報から伝える必要があります。
  2. 懸念への対応: 親族からは、子どもの背景、育てられるか、周囲の目、相続、健康問題など、様々な懸念や反対意見が出される可能性があります。それぞれの懸念に対し、感情的にならず、調べた情報やご自身の考えを冷静に伝えます。全ての懸念に完璧に答えることは難しいかもしれませんが、真摯に向き合う姿勢が大切です。
  3. 一方的な報告ではなく、理解と協力を求める姿勢: 「すでに決めたこと」として報告するのではなく、「私たちはこのように考えているが、〇〇さん(親族)の意見も聞かせてほしい」「応援・協力してもらえると心強い」といった、理解と協力を求める姿勢で臨みます。
  4. 時間をかける: 親族の理解を得るには時間がかかる場合があります。一度で受け入れられなくても、諦めずに、機会を見つけて少しずつ話し合いを重ねることが重要です。
  5. 支援を求める場合: 実際に子どもを迎えた後、親族からの物理的・精神的な支援が得られると、家庭にとって大きな力となります。しかし、支援を強制するのではなく、できる範囲での協力を優しくお願いする形が良いでしょう。

家族で起こりうる課題と乗り越えるヒント

家族全体で里親・養子縁組に向かう過程や、実際に子どもを迎えた後に、様々な課題に直面することがあります。

これらの課題に一人で、あるいは夫婦だけで向き合おうとせず、積極的に外部の支援を活用することが重要です。児童相談所の担当者、里親支援機関、養子縁組あっせん団体のカウンセラー、経験者の会などが相談先として考えられます。

まとめ

里親・養子縁組によって新しい家族を迎えることは、関わる全ての人にとって大きな変化と成長の機会です。この素晴らしい挑戦を成功させるためには、何よりもご家族全体の理解と協力が不可欠となります。

パートナーとの綿密な話し合い、お子さんの気持ちへの丁寧な配慮、親族への根気強い説明など、それぞれの関係性に応じたコミュニケーションを重ねることで、家庭内に子どもを温かく迎え入れる土壌が育まれます。

もし、このプロセスで困難を感じたり、どのように進めれば良いか迷ったりした場合は、一人で抱え込まず、児童相談所や里親支援機関、養子縁組あっせん団体などの専門機関に相談してください。経験豊富なスタッフが、ご家族それぞれの状況に合わせたアドバイスやサポートを提供してくれるはずです。

家族全員が同じ方向を向き、互いに支え合う体制を築くことが、子どもにとっても、そして家族にとっても、幸せな未来を築くための最も重要な一歩となるでしょう。