里親登録後のステップ:家庭への委託に向けたマッチングの流れと準備
はじめに:里親登録後の新たな段階へ
里親認定研修を修了し、自治体や児童相談所への里親登録を完了された皆様、おめでとうございます。これで、いよいよ実際に子どもを家庭へ迎えるための具体的な準備が整った段階です。しかし、登録したからといってすぐに子どもが委託されるわけではありません。次に待っているのは、「マッチング」と呼ばれる、子どもと里親家庭との縁を結ぶための大切なプロセスです。
この期間は、期待とともに「いつ声がかかるのだろう」「どんな子どもと出会うのだろう」といった不安や疑問を抱かれる方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、里親登録後に子どもが家庭へ委託されるまでの一般的なマッチングの流れ、かかる期間の目安、そしてこの待機期間に里親家庭ができる準備について詳しく解説します。このプロセスを理解し、主体的に準備を進めることが、来るべき子どもとの出会いをより良いものにするための一歩となります。
里親マッチングプロセスの全体像
里親登録を完了すると、里親名簿に登録され、委託を必要とする子どもが発生した場合に候補として検討されることになります。子どもをどの家庭に委託するかは、子どもの抱える状況、年齢、個性、ニーズなどを総合的に考慮し、最もその子の幸せにつながると判断される家庭が選ばれます。この判断は、原則として児童相談所が行います。
マッチングのプロセスは、主に以下の段階を経て進められます。
- 委託候補の検討: 児童相談所の担当者が、新たに保護された、あるいは家庭での養育が困難となった子どもの状況を詳細に把握し、里親名簿の中から、その子どもの養育に最も適していると考えられる里親家庭を複数検討します。
- 里親への打診・情報提供: 検討された里親家庭に対し、児童相談所から連絡があり、子どもの状況(年齢、性別、背景、健康状態、発達状況など)について説明が行われます。この際、子どものプライバシーに配慮しつつ、里親が受託可能かどうかを判断するために必要な情報が提供されます。
- 里親の検討・受託意思の表明: 情報提供を受けた里親は、家族と話し合い、自身の家庭でその子を受け入れることができるか、必要な養育を提供できるかなどを慎重に検討します。受託が可能であると判断した場合、児童相談所にその意思を伝えます。
- 子どもの意向確認(年齢による): 年齢によっては、子ども自身の意向も確認されます。
- 面会交流の実施: 里親と子どもの双方の意向が確認できた場合、委託に向けた準備として、段階的な面会交流が実施されます。最初は短時間から始め、徐々に時間を長くしたり、場所を変えたりしながら、お互いの関係を築いていきます。
- 試験的な宿泊(試し行動): 面会交流が順調に進んだ場合、子どもが里親家庭に短期間宿泊する「試し行動」が行われることがあります。これは、子どもと里親家庭が実際に生活を共にすることで、より具体的に適合性を確認するための重要なステップです。
- 最終的な委託決定: 試し行動を含めた面会交流の結果や、関係機関の意見などを踏まえ、児童相談所が最終的な委託の決定を行います。
- 家庭への委託(措置変更): 委託が決定すると、子どもの「措置」が変更され、里親家庭への委託となります。
このプロセスは、子どもの安全と最善の利益を最優先に進められます。
マッチングにかかる期間の目安
里親登録後のマッチング期間には、残念ながら明確な期限はありません。数週間で子どもが委託されるケースもあれば、数ヶ月、あるいは1年以上かかるケースもあります。この期間は、以下のような様々な要因によって大きく左右されます。
- 委託を必要とする子どもの発生状況: 地域の状況や時期によって、委託先を探している子どもの数や状況は変動します。
- 里親家庭の状況と希望: 里親家庭の年齢、家族構成、居住環境、受託できる子どもの年齢や性別、特別な支援が必要な子どもを受け入れられるかといった条件によって、マッチングの機会は異なります。
- 子どものニーズとの適合性: 子ども一人ひとりが持つ個別的なニーズ(特定の年齢の子どもを希望するなど)に、里親家庭の状況がどの程度適合するかが重要な鍵となります。
- 児童相談所の体制: 児童相談所の業務状況や担当者の状況によっても、手続きの進捗に影響が出る場合があります。
マッチング期間が長引いたとしても、それは里親家庭に問題があるわけではなく、子どもにとって最も適切な家庭を見つけるための時間であるとご理解いただくことが大切です。
待機期間に里親家庭ができる準備
子どもとの出会いを待つ期間は、ただ待つだけでなく、里親家庭として必要な準備を進めるための貴重な時間です。この期間を有効活用することで、来るべき委託に備え、より安心して子どもを迎えることができます。
- 夫婦・家族での話し合いを深める: 子どもを迎えるにあたって、夫婦や既にいるお子さんを含め、家族全員で改めて子育ての方針や役割分担、起こりうる課題への対応などについて話し合いましょう。家族全員の理解と協力体制は、里親養育を円滑に進める上で不可欠です。
- 必要な環境整備: 子どもを迎えるための部屋の準備、家具や備品(ベッド、机、学用品など)の検討、安全対策(危険なものの整理、チャイルドロックなど)など、子どもの年齢や発達段階に応じた物理的な環境整備を進めましょう。
- 里親制度や子どもの発達に関する知識を深める: 里親認定研修で学んだ内容を復習したり、関連書籍を読んだり、子どもの心理や発達、トラウマケアなどについて学ぶ機会に参加したりすることも有効です。
- 他の里親との交流: 既に里親として子どもを迎えている家庭や、同じように待機している里親登録者との交流は、情報交換や心理的な支えとなります。里親会や交流会などに積極的に参加してみましょう。
- 相談窓口の活用: 待機期間中の不安や疑問は、抱え込まずに登録した児童相談所の里親担当者や、里親支援機関などに相談しましょう。定期的に連絡を取ることで、児童相談所も里親家庭の状況を把握しやすくなります。
- 自己の心身のケア: 里親養育は、喜びも大きいですが、同時に様々な課題に直面することもあります。心身ともに健康な状態で子どもを迎えるためにも、この期間に自身の健康管理やリフレッシュに努めることが大切です。
マッチングが成立しなかった場合
複数の里親家庭が候補となる場合や、面会交流や試し行動の結果、子どもと里親家庭の適合性が難しいと判断される場合など、残念ながらマッチングが成立しないこともあります。これは、里親家庭に問題があるのではなく、あくまでその子どもにとって最善の選択ではなかった、という結果です。
マッチングが成立しなかった場合でも、落ち込まず、児童相談所からのフィードバックを参考に、次に向けた準備や検討を続けることが重要です。また、再び新たな子どもとのマッチングの機会は訪れます。
まとめ:焦らず、着実に、相談しながら
里親登録後のマッチングプロセスは、子どもと里親家庭が互いに準備を整え、最良の形で出会うための大切な時間です。期間には個人差がありますが、焦らず、この期間を家族での話し合いや、必要な準備を進めるための機会と捉えましょう。
待機期間中に感じる不安や疑問は、決して一人で抱え込まず、登録した児童相談所や里親支援機関に積極的に相談してください。専門家や経験者からのアドバイスは、次のステップに進むための大きな助けとなります。子どもを迎える日を楽しみに、そして落ち着いて、着実に準備を進めていきましょう。