養子・里親を検討する前に知るべき申請要件:年齢・健康・収入などの基準と公的・民間の違い
養子・里親制度の申請要件について
養子縁組や里親制度に関心をお持ちの方が、次に知りたいことの一つに「自分が里親や養親になるための要件を満たしているのだろうか」という点があるかと思います。年齢、健康状態、経済状況など、具体的な基準について疑問や不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、里親制度と養子縁組制度において、養育者に求められる主な申請要件について詳しく解説します。特に、公的機関(児童相談所)を通じたケースと、民間のあっせん団体を通じたケースでの要件の違いや傾向についても触れ、制度をより具体的に検討するための参考にしていただければ幸いです。
里親制度における主な申請要件
里親制度は、様々な事情により家庭での養育が困難な子どもたちを、一定期間家庭に迎え入れて養育する制度です。里親になるための要件は、児童福祉法などの法令で定められており、さらに各自治体(都道府県や市町村)が独自の基準を設けている場合があります。
一般的に求められる主な要件は以下の通りです。
- 養育里親の場合:
- 年齢: 法律上の年齢制限はありませんが、子どもの養育に必要な心身の健康と養育能力が求められます。多くの場合、自治体や団体が「子どもが成人するまで養育できること」を想定した年齢基準(例:登録時の上限年齢)を設けていることがあります。
- 健康状態: 心身ともに健康であることが必要です。子どもの養育に支障がないか、医師の診断書などで確認されることがあります。
- 経済的安定: 子どもを含めた世帯全体の生活を営むのに必要な経済的基盤があることが求められます。高額な収入が必要というわけではなく、安定した収入があり、生活が成り立つかどうかが重視されます。
- 住環境: 子どもに健全な生活環境を提供できる住居が必要です。子どものプライベート空間の確保などが考慮されます。
- 家族構成: 夫婦である必要はありません。単身者も里親になることができます。ただし、家族構成や家族関係が子どもの養育に適しているかが総合的に判断されます。
- 欠格事由に該当しないこと: 過去に児童虐待を行ったなど、法律で定められた欠格事由に該当しないことが条件です。
- 研修の受講: 里親制度や子どもの養育に関する研修を受講する必要があります。
これらの要件はあくまで一般的なものであり、最終的な判断は各自治体の児童相談所が行います。
養子縁組における主な申請要件
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組がありますが、家庭での養育を必要とする子どもとの縁組を考える場合、主に特別養子縁組が中心となります。特別養子縁組は、実親との法的な親子関係を解消し、養親との間に新たな親子関係を成立させる制度です。
特別養子縁組の養親になるための主な要件は、民法や児童福祉法で定められています。
- 年齢: 原則として、養親となる者は25歳以上であることが必要です。ただし、夫婦共同で養子縁組をする場合、夫婦のいずれか一方が25歳以上であれば、もう一方は20歳以上でも要件を満たします。養子となる子よりも年長であることも要件です。
- 夫婦であること: 原則として、配偶者のいる者が夫婦共同で養子縁組をすることが必要です。単身者や事実婚のカップルは、現行法では特別養子縁組の養親となることはできません。
- 健康状態: 里親と同様、心身ともに健康であることが求められます。
- 経済的安定: 子どもを養育できる十分な経済力があることが必要です。
- 住環境: 子どもに適切な養育環境を提供できる住居が必要です。
- 実親の同意: 原則として、実親の同意が必要です。ただし、実親による虐待や遺棄など、実親の同意が不要とされる例外規定もあります。
- 子の利益: 養子縁組が、子の利益のために特に必要であると認められることが最も重要な要件です。
- 試験養育期間: 原則として、子どもを家庭に迎えて6ヶ月以上の試験養育(監護)期間を経る必要があります。
- 家庭裁判所の決定: 最終的に、家庭裁判所の審判によって成立します。
普通養子縁組の場合は、養親となる者に年齢制限はなく、夫婦である必要もありませんが、実親との親子関係は継続します。
公的機関と民間あっせん団体の要件の違い・傾向
里親制度は主に都道府県や指定都市の児童相談所が窓口となり、養子縁組も特別養子縁組については児童相談所または民間のあっせん団体を通じて手続きが進められます。公的機関と民間あっせん団体では、申請要件や選考基準に若干の違いや傾向が見られることがあります。
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公的機関(児童相談所):
- 法令に基づいた基本的な要件を厳格に適用します。
- 里親制度においては、年齢制限を設けていない場合でも、現実的な養育期間を考慮した基準があることがあります。
- 経済的な要件についても、生活困窮者である場合などを除き、過度に高い基準を求めることは少ない傾向があります。
- 様々な背景を持つ子どもたちの受け入れを想定しており、柔軟な対応を心がけていることが多いです。
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民間あっせん団体:
- 団体の理念や方針に基づき、独自の基準や選考プロセスを設けている場合があります。
- 年齢の上限を設けている団体が多い傾向があります。
- 経済的な要件についても、一定の年収目安を示すなど、公的機関より具体的な基準がある場合があります。
- 特定の年齢層や背景を持つ子どものあっせんを得意とする団体もあります。
- 研修や面談をより丁寧に行い、養親希望者の準備を重視する傾向が見られます。
どちらの機関を通じる場合でも、最終的に最も重視されるのは「子どもの幸せ」であり、養育者候補の総合的な養育能力や家庭環境が評価されます。要件はあくまで入り口であり、人柄や価値観、子どもへの理解なども含めて判断されます。
まとめ:まずは相談から
この記事では、養子・里親制度における主な申請要件について解説しました。年齢、健康状態、経済力、家族構成など、気になる点は多いかと思いますが、これらの要件はあくまで基準であり、個別の状況によって判断は異なります。
ご自身の状況で要件を満たすか不安がある場合や、さらに詳しい情報を知りたい場合は、まずは最寄りの児童相談所や、関心のある民間のあっせん団体に相談してみることをお勧めします。相談を通じて、制度の全体像や具体的な手続き、そしてご自身が里親や養親になる可能性について、より明確な情報を得ることができるでしょう。
要件を確認することも大切ですが、それ以上に、子どもを温かく迎え入れ、安定した家庭環境を提供したいという思いが何よりも重要です。ぜひ一歩踏み出し、専門機関に相談してみてください。