養子・里親家庭の子育てで悩んだら:よくある課題と相談先・支援サービス
はじめに:子どもを迎えた後の「子育て」という新たなステップ
養子縁組や里親制度を通じて子どもを迎えることは、家庭にとって大きな喜びであると同時に、新たな子育ての始まりでもあります。血縁関係のない子どもとの関係構築、過去の経験を持つ子どもへの対応、実親や関係機関との連携など、実子を育てる場合とは異なる、あるいはより複雑な課題に直面することもあるかもしれません。
「このような時、どのように対応すれば良いのだろう」「誰に相談すれば良いのだろう」といった悩みや不安を抱えることは、決して珍しいことではありません。この記事では、養子・里親家庭でよく見られる子育て上の課題を取り上げ、それらに対する向き合い方のヒントと、利用できる様々な相談先・支援サービスについてご紹介します。一人で抱え込まず、適切なサポートを得ながら、子どもと共に成長していくための一助となれば幸いです。
養子・里親家庭でよくある子育ての課題
養子・里親家庭の子育てにおいて直面しやすい課題は多岐にわたります。子どもの年齢や背景、家庭の状況によって異なりますが、ここでは一般的に見られるいくつかの課題を挙げます。
- 子どもとの信頼関係・愛着関係の構築: 子どもが過去に傷つきや別れを経験している場合、養育者に対する信頼を築くのに時間がかかることがあります。どのように関われば子どもの心に寄り添えるのか、不安を感じる養育者もいらっしゃいます。
- 告知の問題: 養子縁組や里親であることを子どもにいつ、どのように伝えるかは、多くの家庭が悩むテーマです。子どもの年齢や理解度に応じた伝え方が求められます。
- 子どもの過去・実親との関係: 子どもの過去の経験や実親への思いにどのように向き合うか、実親との交流がある場合にどのように調整するかなど、複雑な感情や関係性の中で生じる課題です。
- 特定の行動への対応: 試し行動、反抗、夜尿、摂食の問題など、子どもの示す特定の行動の背景を理解し、適切に対応することが求められます。これらが過去の経験と関連している場合もあります。
- 学業・学校生活: 学校での人間関係、学習の遅れ、特別支援教育の必要性など、学業や学校生活に関する課題が生じることがあります。学校との連携も重要になります。
- 思春期の課題: 自己同一性の確立、進路選択、養子・里親であることへの葛藤など、思春期特有の課題に加えて、養子・里親としての立場から生じる課題に直面することがあります。
- 社会との関わり: 周囲の理解不足による偏見や無理解、あるいは善意からの無神経な言動に直面し、どのように対応すれば良いか悩むこともあります。
これらの課題は、決して養育者の能力不足を示すものではありません。むしろ、子どもが持つ複雑な背景と向き合う中で自然に生じることであり、適切な情報やサポートがあれば乗り越えられるものです。
課題解決のために利用できる相談先・支援サービス
子育ての課題に直面した際に、一人で抱え込まずに利用できる相談先や支援サービスは様々です。ここでは、主なものをいくつかご紹介します。
1. 委託・あっせんを受けた機関
- 児童相談所: 里親制度の場合、委託を受けた児童相談所が主な相談窓口となります。担当職員(児童福祉司、里親担当職員など)やケースワーカーが定期的に家庭訪問を行い、相談に応じたり必要な支援を調整したりします。養子縁組の場合も、相談に応じてくれることがあります。
- 民間あっせん団体: 養子縁組の場合、あっせんを受けた民間団体がアフターフォローや相談支援を提供している場合があります。団体によって支援内容は異なりますが、電話相談、面談、交流会の開催などがあります。
まずは、子どもを委託・あっせんしてくれた機関に相談することが第一歩となります。子どもの状況や家庭の状況を最もよく把握している場合が多く、適切な専門家やサービスへの橋渡しも期待できます。
2. 自治体の養育支援・相談窓口
- 市区町村の窓口: 子育て全般に関する相談窓口(子育て世代包括支援センターなど)や、障害福祉、教育に関する窓口でも相談できる場合があります。
- 各自治体の里親支援機関: 里親制度を推進・支援するために、各都道府県・政令指定都市などが設置・委託している機関です。里親家庭への訪問相談、研修、交流会の企画運営、レスパイトケア(短期預かり)の提供など、包括的な支援を行っています。里親だけでなく、養子縁組家庭が利用できる場合もありますので、確認が必要です。
- ファミリーサポートセンター: 子育ての相互援助活動を行う会員組織です。急な用事やリフレッシュしたい時などに、登録している地域の協力会員に一時的に子どもを預かってもらうなどの支援を受けることができます。
地域の支援情報は、自治体のウェブサイトや広報誌、子育て情報サイトなどで確認できます。
3. 専門機関・専門家
- 児童精神科医・心理士: 子どもの行動や発達に気になる点がある場合、専門的な診断や心理療法が必要となることがあります。児童相談所や医師、支援機関を通じて紹介を受けることができます。
- 医療機関: 子どもの身体的な健康問題や発達に関する相談、専門医による診察などを受けられます。
- 弁護士: 実親との法的な問題や、相続などに関する相談が必要な場合に利用します。
専門的な支援が必要と感じたら、まずは関わりのある支援機関に相談し、適切な専門家を紹介してもらうのがスムーズです。
4. 養子・里親経験者の集まり(自助グループ・交流会)
- 里親会: 各自治体に設置されている里親の団体です。里親同士の情報交換や交流、研修などを行っています。経験者ならではの共感や実践的なアドバイスを得られる貴重な場です。
- 養子縁組家庭の会: 民間団体などが開催する養子縁組家庭向けの交流会や当事者会です。告知の方法や子どもの心理、関係機関との付き合い方など、共通の課題について話し合ったり、情報を共有したりできます。
同じような経験を持つ人とのつながりは、孤独感を和らげ、新たな視点や解決策を見つける助けとなります。
5. オンライン情報・相談サービス
- ウェブサイト: 公的機関やNPOなどが運営するウェブサイトには、制度に関する情報や子育てのヒント、相談窓口のリストなどが掲載されています。
- SNS・オンラインコミュニティ: 匿名で相談したり、情報交換したりできるオンライン上のコミュニティもあります。ただし、情報の正確性には注意が必要です。
- オンライン相談: 一部の支援機関や専門家が、オンラインでの相談サービスを提供している場合もあります。
いつでも手軽にアクセスできる情報源ですが、信頼できる情報かどうかを見極めることが重要です。
相談・支援を受ける上でのポイント
- 早めに相談する: 課題が小さいうちに相談することで、早期解決につながることがあります。
- 状況を具体的に伝える: いつからどのような状況で困っているのか、具体的に伝えることで、相談員も状況を把握しやすくなります。
- 期待することを伝える: どのような情報を求めているのか、どのような支援を期待しているのかを明確に伝えると、より的確なアドバイスや支援を得やすくなります。
- 複数の相談先を利用する: 一つの相談先だけで解決しない場合や、異なる視点からの意見を聞きたい場合は、複数の相談先を利用することも有効です。
- 焦らない: 子どもとの関係構築や課題の解決には時間がかかることもあります。すぐに結果が出なくても焦らず、粘り強く取り組む姿勢も大切です。
- 養育者自身のケアも大切に: 子どもの課題に向き合う中で、養育者自身もストレスを抱えがちです。自分自身の休息やリフレッシュの時間を確保し、必要であれば養育者自身の相談先を利用することも考えてみましょう。
まとめ:一人で悩まず、支援の輪を頼る
養子・里親家庭の子育ては、喜びと共に様々な課題が伴うものです。しかし、それは特別なことではなく、多くの家庭が経験することです。大切なのは、課題に直面した時に一人で抱え込まず、適切な情報やサポートを求めることです。
この記事でご紹介したように、公的機関、民間団体、専門家、経験者の集まりなど、様々な相談先や支援サービスが存在します。それぞれの家庭の状況や子どものニーズに合わせて、利用しやすい窓口を見つけてみてください。
子育ての課題に丁寧に向き合い、利用できる支援を上手に活用しながら、子どもと共に豊かな日々を築いていくことを願っています。どのような小さな悩みでも、まずは信頼できる相談先へ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。